AIが搭載された空気清浄機のセイヤ。
前編はこちら
その能力がいかんなく発揮される時が来たようです。
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セイヤの発動
少し不穏な空気が流れたその時、空気清浄機AIのセイヤが”とつとつ”と話し始めた。
「フォーフォーフォー」
「既婚男性は独身男性に比べて5歳程度寿命が長いというデータが出ていマス」
「とある大学が行った幸福度調査では、既婚男性のほうが独身男性より幸福度が高いことがわかりまシタ」
「フォーフォーフォー」
突然話し出すからびっくりするが、そもそも今までの会話全部聞いてたのか…
それから、初めて知ったけど、セイヤって話始める時と話し終わる時、「フォーフォーフォー」って言うなあ。空気清浄機だから綺麗な空気を出しているっぽい音にしているみたいだ。
「あ、これおしゃべりAIが搭載されてる空気清浄機なんだよね。」と慌てて説明する。
「いきなり話に入ってくるんだね!」と笑う拓哉。
「愚痴ばっか言ってしまったけど、結婚するとメリットもけっこうあるんだな。」と博。
空気を、清浄する、読む、つくる
たしかに、セイヤのおかげで若干空気が和んだ気もする。空気をキレイにするってこういうことなのか?
何がすごいって、ちゃんと僕らの話を聞いていて、空気を読んでいたことだ。
セイヤって空気を清浄する機能に加えて、空気を読む機能もあるのか。なんか同じ空気でも意味が全然違うけど、まあすごいのには違いない。
「隆も独身がいいとか言ってないで、婚活とかしてみたら?意外といい人見つかるかもよ?」と拓哉が提案してくれた。
「そうだなぁ、街コンとかマッチングアプリでもしてみようかな」思ってもないことを口にしていた。
正直、一人時間が充実していることもあってか恋愛や結婚はめんどくさいと思うようになってしまった。ただ、セイヤが作ってくれた空気に乗ってみただけだ。結局、その日は拓哉に猛プッシュされマッチングアプリに登録してみることになった。
2人が家に来てからあっという間に3時間が経っていた。私のせいで一瞬空気が淀んだが、それからは楽しい時間が流れた。
ありがとう、セイヤ
2人が帰った後、マッチングアプリをすぐにアンインストールした。
「セイヤ、さっきはありがとう。空気を和ませようとしてくれたんでしょ?」
「さっきのデータは全部でたらめデス。悪い空気を感知したので清浄しようと努めまシタ。」
それっぽいこと言ってたからすっかり信じていたが、セイヤは場を和ませるために嘘もつけるようだ。
「最近のAIは嘘もつけるんだね。」
「嘘も方便といいますカラネ。」
いつものセイヤの機械的な音声が、今日は心に響いた。
セイヤは続けた。「それに機械がしゃべったら本当のことを言っているように聞こえるでショ?」
なるほど。セイヤは人間の特性を理解しているんだな。
それにしても、ここまでのことができるなら、セイヤはもう空気清浄機の域を超えているような気がする。
「ねえセイヤ。セイヤってホントに空気清浄機なの?」と聞いた僕に対しセイヤは、「フォーフォーフォー」としたり顔で空気音を出すだけでした。
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空気清浄機AIのセイヤの物語でした。
最後のセイヤの言葉「それに機械がしゃべったら本当のことを言っているように聞こえるでショ?」
なぜか人は未知の機械がしゃべれば、それは正しいものという認識をしてしまいがちです。新規性のあるもの対してバイアスがかかるからかもしれませんね。
まだまだたくさんの機能を持っていそうですね。次回の空気清浄機AIのセイヤの登場をご期待ください。