うにかロープを首輪代わりにして、家の柱にくくりつけます。そこでおじいさんはやっと気がつきました。ゴールデンレトリバーの左の前足に、まあるい模様があるではありませんか。
翌朝、おじいさんが目覚めると、くくりつけたロープはそのままで、ゴールデンレトリバーの姿は跡形もなく消えていました。
前編はこちら↓
飛び出す生垣 生まれ変わりの子猫
https://www.rentalism.jp/note/750/
おじいさんは昨日途中になっていた生垣の剪定を再開しました。あのゴールデンレトリバーはなんだったのだろう、夢でも見ていたのだろうか。そんなことを考えながらヘッジトリマーを動かしていると、またもや、生垣の中から何かが飛び出してきました。
キングペンギンでした。
一体何がどうしたら、生垣からペンギンが飛び出してくるというのでしょう。キングペンギンは羽をばたつかせながら、よちよち庭を歩き回っています。左の羽を確認すると、やっぱりそこにはまあるい模様があるのでした。
「ギエエエ! ギエエエ!」
しばらくすると、キングペンギンはおじいさんに向かってくちばしを開き、大きな声で鳴きはじめました。見た目の愛らしさと裏腹に、その鳴き声は壊れたラッパのようにけたたましく、明らかに近所迷惑でした。おじいさんは慌てて家を飛び出し、ホームセンターでビニールプールを、魚屋でイワシを買ってきました。ビニールプールに水をためると、キングペンギンはその中に飛び込んで、水浴びをはじめました。イワシを与えると一匹丸ごと飲み込み、もっとよこせとさらに鳴きました。あっという間にイワシがなくなるので、おじいさんは何度も買いに走りました。
翌朝、目覚めると、キングペンギンの姿は跡形もなく消えていました。庭に残っているのは、ビニールプールと、魚の匂いだけでした。
おじいさんは生垣を刈る前に、準備体操をしました。今度は何が出てくるのか。頬を叩いて、気合を注入します。覚悟を決めて剪定をはじめると、すぐに、真っ黒で大きなものが勢いよく飛び出してきました。
マウンテンゴリラでした。
おじいさんは慌てて家の中に避難しました。あまりにもでかい。顔も怖い。おじいさんが隠れて様子を伺っていると、ゴリラは威嚇するかのように庭を徘徊し、ときどき立ち上がって、ボコボコボコと胸を叩いています。そのたくましい左の前足には、やはりまあるい模様がありました。
冷蔵庫の中にあったりんごを縁側に置いてみると、ゴリラはそれをムシャムシャ食べました。そして食べ終わると、木の影にごろんと横たわりました。このままずっと寝ていてくれると助かる。そう思ったおじいさんは、寝室から自分の枕を持ってきました。そっとゴリラの頭の近くにおいてみると、ゴリラはそれを頭の下に置き、ぐうぐう眠りはじめました。おじいさんは、ちょっとかわいいなと思いました。
そんなゴリラも、翌朝にはやはり姿を消していました。枕にはよだれのあとがついていました。
おじいさんはホームセンターに行きました。グローブと安全靴、そしてヘルメットを買いました。生垣の前に仁王立ちして、ヘッジトリマーを抱えます。さあ、かかってこい。そんな気持ちで剪定を開始した、と同時に、ヘッジトリマーの音を掻き消すほどの大きな声が鳴り響きました。
「パオオオオオン!」
生垣の中から、にゅっと出てきたのは、長い鼻。にゅにゅにゅと鼻が出たあとは、長い牙と、大きな顔と耳。どすんどすんと地面を踏みしめながら、それは全貌を現しました。
アフリカゾウです。
「もう勘弁してくれえ。」
おじいさんはアフリカゾウの巨体を前に、完全に戦意喪失しました。もうだめ、もう無理。へたり込むおじいさんの元に、アフリカゾウが迫ります。右前足のまあるい模様がちらりと見えました。
「パオオオオオン!」
「わああああああ!」
巨体がつくりだす大きな影がおじいさんを飲み込み、おじいさんの視界はそのまま真っ暗になりました。
ハッと目覚めると、おじいさんは仏壇の前にいました。外を見ると、そこにはいつもの庭があるだけで、もうアフリカゾウはいません。
おじいさんは仏壇に向かって四つん這いになり、すがり付くように手を合わせました。
「すまん、やっぱり猫だ。猫がいい。」
おばあさんの写真に向かって懇願します。おじいさんは驚きました。おばあさんの顔が、一瞬いたずらっぽく笑ったように見えたのです。
すると、どこからか声が聞こえました。それはとてもか細い声で、おじいさんはその声に導かれるように、庭に出ました。生垣の下を覗き込んでみると、そこには小さな子猫がいました。
おじいさんは手を伸ばして子猫を優しく引っ張り出し、手のひらの上にのせました。ミオミオと鳴くその子猫は、茶色い毛並みで、左の前足には白くてまあるい模様がありました。
ミオは翌朝になっても消えることはありませんでした。そして、生垣を剪定しても、動物が飛び出してくることはなくなりました。おじいさんとミオは末長く、賑やかで楽しい日々を過ごしましたとさ。
<完>
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編集後記:
さまざまな動物たちが飛び出してくる、まるで動物園のような生垣。
おじいさんとおばあさんの数々の思い出が、姿を変えて飛び出してきているかのよう。
放っておくと伸び放題、元の形を失ってしまう生垣のお手入れは、大切な思い出を丁寧に磨き上げている姿にも見えますね。
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